崖の上のポニョ

昨日急遽休みだったので観てきました。




結果だけ言ってしまえば映像だけ作品。駄作ではないですが。


作画枚数17万枚とか言ってるだけあって作画は素晴らしい物があります。
海の中の描写だけで10万枚以上使ってるであろうとは思いますがw
実際コピーしてそれっぽく配置するっていう逃げ方もしてないように見えましたし。
ただ逆にゴチャゴチャしすぎてさすがに見にくすぎやしないかと思う場面もいくつか。
しかしそれを差し引いても素晴らしい作画なので作画マンは必見。


欲を言うと多少色味のバランスが悪いかなと思います。
海の色味がシーンごとに変わりすぎてて嵐のシーンがちょっと黒すぎる気がします。
普段の海でも足が海に入って波が立つところが実線でちょっと違和感があります。
透明感を出すシーンではないけれど嵐でもないのであれは色T線で良かったのでは?
海の生き物も基本的に黒寄りか白寄りとくっきりし過ぎかなと。
ポニョと妹たちが赤なので差別化が図れているので問題無いと言えば無いのですが。


メインキャラクターは凄く魅力的。
とにかくポニョが可愛くて仕方が無いです。宗助はポニョの引っ張りも手伝って可愛いです。
ポニョの妹たちや海の生き物達も造形が素晴らしいし愛を持って描かれているように見えます。
サブキャラクター達もデザインや色使い等は充分に良いものであるとは思います。
ただストーリー的な扱いが悪いというか意味が無いためどうにも魅力が無いのが痛すぎます。



さて問題であるストーリーと構成の話。
ストーリーだけ見るとハッキリ言って散漫で面白みは全く無いと言っても良いでしょう
主眼となるものが宗助とポニョの可愛さを出すためだけならば余計なものが多すぎますし
成長物語にするんであれば足りないものが多すぎますし家族の関係を強調するのであれば
そもそも語れてすらいないことに気づくべきですしとにかく話としてのテーマが見えません。


例えば家族の話に関して言えば
父が船乗りで母も働いているという共働き夫婦(母子家庭寄り)という設定は良いんですが
両親をお父さん・お母さんと呼ぶという基本的なところが守られてないのは辛いです。
ファーストネームで呼ぶ必要性を全く感じません。
ポニョはちゃんと普通に呼んでいるのに何故宗助には呼ばせないのか理由が分からないです。
お母さんの親としての態度にも問題がありますが家族としての形をどう表現したいのかが
そもそも固まっていないように感じるのでそれ以前の問題と言えるでしょう。


父が船乗りという設定が舞台が海であるからという単純なこじつけ方にしか思えませんし。
正直これが市場の店主だろうとただのサラリーマンだろうとその存在に何の意味もありません。
このように家族としてのあり方が視聴するものに明確に示されていないため
ストーリーの展開のさせ方に違和感を覚え突っ込み所を気づかせてしまっているのです。
もう少ししっかり描いていれば嵐のシーン前後の母の行動も多少はぼやけるはずですが。


一つの映画としての構成もやや辛い部分があります。
千と千尋の時も思った部分なのですが終盤の余韻で引っ張る構成は今回はNGなのではないかと。
カオナシとの電車の旅はそれまでの綺麗さを清算するための旅と考えれば納得がいくのですが。
今回に関してはそれまでの話が上記の理由などから納得出来るものではありませんでした。
そのため宗助とポニョが2人でひまわりの家に行く流れに完全に入り込めない状態になってしまう。
途中で出てくる赤ん坊連れの家族が出てくる意味も宗助の家庭を考えると嫌味に見えますよね。


トンネルに入っていく所も千と千尋と比べると描写としての説得力を感じる事が出来ません。
ポニョが嫌がっているのに大して抵抗もせず入っていきただのトンネルにしか見えないのに
ポニョが魚形態にどんどん戻っていってしまってトンネルの意味が全く無さ過ぎて冷めました。
フジモト、宗助、頑固婆さんの3人のやり取りも突然始まって突然終わって意味が分かりません。




というわけで映像だけ作品でした。なんか実写キャシャーンに近い印象。あそこまで駄作じゃないですが。
細かい部分が少しずつ狂っていった結果総合的に見て崩れてしまっているといった印象ですね。
作画だけ見れば90点近くつく内容ですが総合で見れば35〜40点ぐらいでしょうか。
ポニョが可愛すぎるので小学校1〜2年生ぐらいの子供と作画マンは見てもいいと思います。
観終わった後近くに座ってた子供が「ポニョ可愛かった〜♪」と言っていたのが救いでしたね。